自分のコンプレックスから引きこもりになった少女の話

NLPの創始者の1人である
ロバート・ディルツ氏が話されていた、

心理療法家ミルトン・エリクソンの
エピソードトークをお伝えします。

こちらの内容はロバート・ディルツ氏が、
日本で初めてスライト・オブ・マウス
(リフレーミングの14のパターン)
について講義された時、

その実例として話して下さった内容であり、
とても印象に残った、

天才ミルトン・エリクソンならではの
ユニークなエピソードです。

<自分のコンプレックスから引きこもりになった少女の話>

世界的な天才心理療法家ミルトン・エリクソンの元には、拒食症や対人恐怖症といった悩みを持つ人が彼を頼って訪れました。

今回ご紹介するケースは、11歳の少女のお話です。

皆さんも、もしかしたらこのぐらいの年齢の時、彼女のような行動はとらないにしても、同じような思いを感じたことがあるかもしれない。そんなお話です。

この少女はまさに思春期に入り始めようとして大人になろうとしているそんな年齢の女の子なので、「自分が人からどう見えているのか」というのが気になっていました。

そして、当たり前のことかと思いますが、人間というのは体が成長する時に全てが同時にバランスよく成長するわけではありません。

まさに成長途中であったこの少女は、自分の足のサイズが人よりも大きいことをとても気にしていました。

そして、「自分の足は恥ずかしい」とずっと思っていました

家から出るのをやめて友達にも会わない引きこもり状態になる程、恥ずかしさを感じていました。
この少女のお母さんは、当然ながらすごく心配になり、エリクソンに助けを求めました。

エリクソンがその少女に会おうとしているちょうどその時、彼女のお母さんが風邪になってしまい、体調が悪いということでエリクソンは「訪問診療しましょう」と彼女の家まで行きました。

そこで初めてこの少女に出会います。そして、この女の子がどれだけ自分の足の大きさを恥じているかということを観察します。

そして、エリクソンはとてもシンプルながら、非常に興味深いことをしました。

エリクソンはまず、風邪をひいているお母さんの体温を計ったりと、看病のようなことをします。そして娘さんに「新しいタオルを持ってきてくれないかな」と頼みます。

そしてタオルを持って横に立った娘さんの方に体の向きを回転させ、同時に立っていた娘さんの足を思いっきり踏んだのです。

もちろん、娘さんは「痛い!」と声をあげます。

すかさずエリクソンは言うんです。「ごめんなさい。でも、もっと足が大きければちゃんと見えたのに。小さすぎて見えなかったよ。だから踏んじゃったんじゃないかー」と。

少女はびっくりして、そこに立ったままでいました。

後日、彼女のお母さんが教えてくれたのですが、あの日以降、彼女は自分の足の文句を一切言わなくなったということ。

そして、学校に行くようになり、お友達にも会うようにもなったとのことです。

いかがだったでしょうか。

さて、ミルトン・エリクソンは何をしたのでしょうか。

一般的なセラピストや能力が高い人でなければ、彼女の恥べき思い込み(足が大きいという思い込み)を変えようと頑張り、

「まだ成長期だから気にしなくていいよ」など、言葉にして何とか説得しようとしてしまうところです。

ところが、ミルトンエリクソンは、相手の思い込みを否定することなく、偶然を装いながらも「その思い込みがもしかしたら真実ではないかもしれない」と彼女が自ら思えるように自然と仕向けたのです。

このように相手を否定せず、直接言葉にしていないのにも関わらず患者に変化を起こすという、ユニークと感じる治療方法を沢山行っていたとロバート氏は教えてくれました。

このエピソードから私たちが学べることは、ミルトン・エリクソンのように患者に限った話ではなく、

顧客や友人、家族といった身近な人に対しても、相手の思い込みをただ間違っていると否定し、変えようとすることは効果的ではないということです。

相手を変えようとするのではなく、「なぜ相手はそのように思い込んでいるんだろう」とよく見て、まず理解しようとすること。

そして、相手の気持ちを理解した上で、その思い込みを無理に変えたり、説得しようとするのではなく、

その思い込みが本当に真実かどうか、相手が自分自身で考えられるようにどうやったらサポートできるかを考え行動していくことが大切なのではないでしょうか。

私達がコミュニケーションでうまくいかない時、まさにこの視点が抜けてしまっていることが多く、相手を変えようと説得しようとしてしまうことがあるのです。

私自身、前職では塾の講師を行っていましたが、「高校を辞めたい」と話している女生徒がいました。もちろん、愛情から親御さんや周囲は色々と説得します。

私がその女生徒を観察していると、「辞めて自分のやりたいことにもっと時間を使いたい」ということが大きいと感じました。ですが、そのやりたいことも特に決まっていないようにも感じました。

つまり、「高校を辞めないとやりたいことは見つからない」という思いがあるようでした。

そこで彼女に、「高校を辞めるという自分の人生で大きな決断をしようとしているんだね。」と伝えると、その生徒は目を見開いて「初めてそんなこと言われた。なんか嬉しい」と言い、

すかさず、「もしかしたら本当にやりたいことは高校を辞めるとか辞めないかじゃなくて、自分が興味のあることにどんどんチャレンジしてみることかもしれないね」と伝えると、

彼女はハッとした表情を浮かべ、その場で考えていました。

後日、彼女から「やっぱり今は高校は辞めない。本当にやりたいことが見つかって、それに全部の時間を使いたいと思えた時に高校は辞めようと思う。」と話してくれました。

まさに説得しようとするのではなく、その思い込みが本当に真実かどうか、相手が自分自身で考えられるよう、私なりにサポートしようと思ったというお話でした。

このような相手の思い込みを変化させ、行動まで変えてしまう14パターンのスキルが学べるトレーニングを、ロバート・ディルツ氏はNLPのセミナー内で分かりやすく行ってくれました。

NLP-JAPANラーニング・センター

NLPトレーナー 後藤昭雄